あーあ、ベースの反りは直りましたよ。突き板だって、一度あれだけくたくたに水を吸ってしまえば、平にはなります。新しい、できたての膠で元通りに貼って…
…げ… 前より大きくなってる。
って、あーた、とうぜんでしょ。
それと、焦げて割れてた所は、もう導管がつぶれてるので、大して水を吸いません。当然、伸張率が違います、どー頑張っても、焦げてない所とぴったり合いません。こーなったら、焦げ目の横の辺りを2本、直線できって、くっつけるしかないや、どーせ大き過ぎるんだし。・・・O'Dio mio! これで幅はぴったしじゃん!
…というわけで、めでたく貼り直し完了。上の写真がそれです。
そして、翌朝…
⦿♦⦿ ‼ ちぢんだ…
って、あーた、とうぜんでしょ
ひび割れてる…
ここからはもう、写真撮る余裕もなく、ひたすら、ひびをおがくずとのりで作ったパテで埋めていく作業。
ほら、ね。私って大バカ、どこかボコッと抜けてる。最終的には何とかなったけど、教訓、材木にあんまり水をかけるのはやめとこうっと。
一番目立った欠陥だった天板とその下の板の反りは修理しました。でも、他にも細かい部分でけっこう沢山補修箇所があります。これも当然と言えば当然ですけどね…
扉の中だって、上部構造がないとき、明るい所で見れば、あちこち、割れたり、反ったり、汚れてたり…
底板は外して、割れを修理して、ついでに反りも直しときましょか…
側面の板も割れや、欠けがあって、ジェッソ(石膏)で埋めてありましたが、もうそれも乾燥しきって外れかけてたので、古材の切れ端で埋め直します。
そうそう、底板はクギ止めしてありました。クギは工場生産されるようになった初期の形。(アタマがタイコ型をしていて、先が斜めにカットしてあり、太い)ここから、年代は1875年位かな、と絞り込んでいけます。
それに、接地も悪いです。結局微妙に歪んでるんです。タマネギ型の脚の長さは皆同じだったので、どれかが磨り減ったわけでもありません。全体に少しずつ歪んだしわ寄せが接地の悪さという形で現れているんです。これは簡単に解決してしまいましょう。
タマネギちゃんの外観にもっとも影響しない形に3mmだけ、底上げします。
おお、独楽のようじゃの…
このようにとにかく、ちょこちょことたくさん手を入れる箇所があります。もう、小さな欠けや割れの補修は、紹介しません。もうさんざんこのブログでもやりましたから。
基本的には、なるべく同世代の同じ材(場合によっては意図的に質の違う材を用いる事もあります。機会を見つけて紹介しますね)
を使って、見える所には違和感の少ない形や木目をえらんで、補修する。接着剤は適材適所で使い分ける。
木工作業としてはこれだけの事であります。
さて、分解したパーツを組み直していきましょう。
オリジナルは小さな三角の木片をいっぱい使って膠だけで天板と枠をくっつけてありました。悪くはないですが、力不足だったようで、いくつかの木片はまっぷたつに割れたり、膠がはがれたりして、結局は材の反る力には対抗できませんでした。それならば、もう少し効果的、かつ、あまり材に負担をかけない方法に変えようと思います。
見えない所なので、強度優先です。枠に反って4辺全てに棒状の材を置き、ネジで天板、枠、と交互に停めていきます。ネジはいったんきつく締めた後、少し緩めておきます。大きな物に適用する時はネジではなくボルトにスプリングを被せたものを使います。この程度の大きさの家具なら、緩めに締めたネジで充分です。
底板は、クギ止めでしたが、結局材に負担がかかって割れていたので、これも、反りと割れの矯正、材の縮んだ分を捕捉をした上で、もうちょっとやんわりと、定位置に留まってくれるようにお願いしました。これもネジ止めです。
ね、オリジナルの形を徹頭徹尾踏襲するだけが修復じゃないんです。基本の鉄則を満たす物であれば文明の利器も使いながら、延命を助成するのがいいんじゃないでしょうか。
明日は最終回、かな。
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