毎日、毎日、独りで黙々と、朝から晩までタンスいじり。同じような仕事を同じような気持ちとやり方で、同じような道具を使ってやってる。
時々、夢から覚めたみたいに、作業中の家具から目を上げると、
“こっ…
ここは何処?
”
一瞬、本気で動揺したりして。 ”あー、そーでしたっ…”
ここには…
こぉいうおバカさんもいない。
こっちのおバカさんはコレをいまだに独りでやったりしてるけど、独りではしゃいだあとの空しさに耐えきれず、最新型、買ったばかりのケータイで嫌がらせメールを…
というのはウソです。SOSメールです
そして…
ジャッ
ジャジャーン!
え〜みちゃん登場!
壊れた修復師を修復する為に現れた修復師ではないが今日だけ修復師の修復師として花の都フィレンツェから駆けつけた銀細工職人!ひと月たった560ユーロの給料で家賃を引いたら200ユーロしか残らない生活を3年間もやってのけた経歴ありでしかも工房のまかない昼食は毎日バヂリコペースト和えスパゲッチーオンリーでもめげずにくず銀を拾い集めながら銀細工の腕にさらに磨きをかけ最終的には安月給で立派にこき使った工房の主をアソコの国送りにし主のバカ息子の頭を銀細工より薄く叩きのばしてそれからそれから・・・
ゼェッ、ゼェッ…とにかく、つい最近東京へ帰ってきたばっかりのえ〜みちゃんが、来てくれたのだ!
お互い、ビンボーだったから、同じトスカーナにいながら年に数回しか会えなかったよねえ。え〜みちゃんとこのママ、元気?喜んでるでしょ?
うちのもさんざんビビらせたわりには何とかやってるよ。私の方が重体って感じ。
ほら、これ、東京のスーパーで、安くて結構おいしいサン・ジョヴェーゼを見つけたって、言ったじゃない?
…え゛! え〜みちゃんも持ってきてくれたの?3年もののキャンティ・クラッシコ! そんな、飲みきれないって〜
コレだよねえ、コレ。冬場は毎日、工房には酒瓶持って通勤。昼間っから上機嫌で、お客に見られたら、彼らにも一杯勧めてごまかす。1.5ℓのミネラルウォーターのペットボトルを持って買いにいく安酒は、キリストの血、というより悪魔の甘露。おいしいけど出所不明、アルコール度不明、一杯飲めばもうぽかぽかあったまるけど、酔いがさめた時の寒さはそれこそ地獄…
え〜みちゃん、え〜みちゃん、酔っぱらい職人2人でコラボしよう!アンティーク家具と銀器の組み合わせは絶対かっこいいよ。金よりイカしてると思うな。ほら、フランコのフィレンツェの家に、私が修復したサイドボードがあったでしょ。あれの上にワインクーラーのせた写真をフランコが送ってきたの。多分銅だと思うけど、あれが銀だったら絶対かっこいい。銀の大きめの深皿でもいいな。
…6時間後、空になった2本のボトルと、パン屑やら甘栗の殻、ひからび始めたハムやチーズの食べ残しを片付けもしないで駅までえ〜みちゃんにくっついて行ってから、いい気分で私もお家へ帰りました。
結論!
よく遊び、よく学び、よく働く!
一日の中で、この3つのうちの一つも欠かさないこと!
やっぱ飲み過ぎたか…?
HP・
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