あぁー、もー何から手をつけていいか分らないー!私は3つ以上の事を
一度に手がけるとパニックになるのだ。"Restauro と Italia " と題打って、始めたはいいけど、ちゃんとまとめて話をするとなると、難しくって、お手上げです。先延ばしにさせて…続きはそのうちちゃんとやります。
ーという訳で、今日から、この Comodino (コモディーノ)の修復を始めちゃいます。
COMODINO … 日本では何と呼ばれてるのか正確には分りません。
BEDSIDE CABINET というのでしょうか。
ベッドサイドキャビネット、という名の通り、ベッドの脇へ置いとくミニ箪笥です。通常2つペアで作られる事が多く、この子もきっと双子の兄弟がいたはずなんですが、今は独りぼっちです…
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イタリア語で、Comodino, “Comoda (引き出し付きの箪笥)のちいちゃいの”、という意味です。そもそも " Comoda " は便利な、とか好都合な、という意味が語源で、確かに物を種類別に分けて収納する為に便利な家具です。それの小さいバージョンがお目見えするのが18世紀。ベッドに入って優雅に読書、真夜中に“地震だっ”って時に貯金通帳とママとパパの写真はすぐ持って逃げられる… 為かどうかは定かじゃありませんが、とりあえず、当時としてはそんなちょっとした贅沢の許される中産以上の階級や、農場主の間に普及して行ったとされています。
上は、19世紀中期の、エミリアロマーニャ地方の農場主の寝室の再現。我らがコモディーノ君のパパとママくらいのが見えます。
方や、同年代、同地方の農民の寝室…と言ってもそう貧しい農民でもないですね、こりゃ。
おじいちゃんやもめなのかな、シングルベッドの横に椅子(これ、18世紀のもんです)。ベッドの下にはトイレ…
ん〜、これこそ本当のコモディーノ、かも知れないですな。
って言う感じで、お金持ちがターゲットだったせいか、18世紀に出始めた当初の物は、みんな高級家具の様相を呈しておりました。
こんな感じ、これはルイ15世様式って言うやつかしら… ? いずれにせよ、フランスが発祥地と見なされてます。
さて、我らがコモディーノ君を改めて紹介しましょう。
彼は、1850年頃から1800年代末の、エミリアロマーニャ地方の典型的なモデルのひとつですが、引き出しが、ちょっとトスカーナ風にアレンジされています。トスカーナ州寄りのエミリアロマーニャの町で作られたのかもしれません。右の写真が通常見られるタイプ、引き出しにも木製のつまみがついています。両者共にGattice (ガッティチェ=
ポプラの仲間ですが、ポプラに比べるとずっと固くてしまった材です)にクルミの薄い板を化粧張りしたもので、4本の柱と、a Cipolla (19世紀に流行った、タマネギ型の)の脚はクルミです。
わお、変わっててかわいいじゃん。と手を出したはいいけど、さぁて、もう外からはっきり見える問題点を、どう解決するか…です。
何か、熱い物置かれたんでしょ… ランプとか、温石とか…それに、インク壷の蓋かなんか置かれたでしょ…
焦げて、化粧張りの板が縮んで割れてそこから連鎖的に引き攣れちゃってる。かわいそうに。 多少ベースから浮いてる程度の剥離なら、アイロンかけてなおるけど、ここまでひどいとなー。
いっぺん剥がさなきゃダメかなあ…
ずいぶん膨れてるじゃないの…
こんなに反ってちゃ “いや、これもパーティナのうちですから”とは言いたくないなあ。目立ち過ぎ、かっこわるいわよ。
でもなぁ、今更反りを直すとなると、化粧張りの板…
あぁっ…もう!何て言うの、日本語で?ツキイタって言うの?Impiallacciatura (インピアッラッチァトゥーラ
3回早口で言うと舌噛みますぜ)
… その impiallacciatura が、ベースの変化に追いつかなくって割れるつもりでしょ…?
いっぺん剥がさなきゃダメかなあ…
しかし、そう素直にはがれて、素直に元の位置に収まるような奴でない事を、私は知っている…
それではまた明日。
HP・
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