できあがりっ!
…って、前回と同じようにまだ仕上げの塗装はしてません。
天板など、いじった所はズヴェルニチァトーレでいったん塗膜を落としたので、
そして、思いっきり洗ってしまったのでまず少し目止めをしなくてはならなかったので、その後軽く色を着けてあります。
そもそも、ズヴェルニチァトーレ…(ってなんだ?とおっしゃる方は以前の記事で詳しく紹介していますのでどうぞ、
こちらへ)
…で、塗膜を落としたり、新しく材を補足したりすると、小さな孔がその材の上に見えます。このミクロサイズの孔が、導管の断面です。木の細胞組織の一つで、根っこから得た水分をからだの隅々まで送る為の、無数のチューブです。ニスなどが塗ってあれば、孔もそれで塞がっているので殆ど見えません。
バージンの材だとサンドペーパーでならしても、その後染料なり、ニスなりを塗ればまた、ばさっと毛羽立った感じで孔が見えてきてしまうものです。それで、一回目の塗装の乾燥後、細かいスチールウールかなんかで表面をならしてから2回目の塗装…と繰り返しながらピカピカにしていくんですね。
まー、でも、アンティーク家具の場合はー。私はあんまり表面的なパーティナ擁護を支持しない修復師なんですけど、ズヴェルニチァトーレ使った上にサンディングするとまるっきり新しい面ができちゃうので、あんまりやりたくないんです。
ズヴェルニチァトーレは浸透性が少ないので、ほとんど孔の入口付近のみの塗装剤を持ってっちゃうだけですから、導管の中に浸透した分は残っています。1〜2回ニスを塗れば、孔埋め(目止め)はOKでしょう。
100歳にもならない、現代の材木で大量生産された“アンティーク家具”
だったら、なけなしのパーティナに固執するのも仕方ないかも知れませんけど、
イヤミ言うなよ…材は古けりゃ古い程、パーティナはしぶとくのこって主張してきます。私は、そういうしぶとい奴らをできる限り尊重したいと思います。やっぱり、美しい木目をその美観として生まれた家具であるならば、それがすすけて見えなくなるようなパーティナは、汚れ、と見なしていいと思うんです。どうでしょう…?
だから、今回もサンディングはしません。しかし、
あんなにジャブジャブ洗っちゃったりして導管がたっぷり吸水して広がってしまった突き板みたいな薄い材は一応、目止めをしといた方がいいかな…と。
日本で言う、砥の粉、
(乾燥粘土の粉と思っていただいていいと思います)を一度刷り込んでから、ごくごく薄い、ほとんどアルコールだけみたいな Gommalacca(シェラック)の溶液を、丸めた綿を包んだ布で塗り込みます。導管に入った砥の粉に gommalacca が染み込んで、硬化するのを目的とします。
写真を撮らなかったなあ…今回、いろいろ手がけてて、どれの写真撮ったか忘れちゃってるうちに作業が終わっちゃってたりして… ごめんなさい。
目止めをしたら、ざっと染料をかけて、砥の粉の白っぽいぷつぷつを見えなくします。
あーら不思議、木目がはっきり出てきました。焦げとインクの黒は取れません。彼は、こういう目に合った、という事です。
他の部分は、今の所ざっとお掃除しただけです。上を向いてる面よりはずっと汚れないですんでるので。アルコールとテレピンを同量ずつ、ほんのひと滴のリンシードオイル、これで新しい汚れは取れちゃいますよ。でも、ワックスや gommalacca も少し持ってかれちゃうので、艶は落ちます。それは後で仕上げ塗装するので御心配なく!
ね…反りも直ったでしょ?
後は、仕上げの色を、里親になって下さる方に決めていただきましょう。
だいたい、イタリアの家具は甘い、明るい色が多いです。実際それがお似合いです。使われる材木の色が軽やかなんです。
クルミや、クリ、モミやら松、オリーブに糸杉!桜!ああ、何て自然に風土を語る家具達!
国力弱いのがなんだ。EUのお荷物で悪かったな。頑張ろーぜ、イタリア!
昔の素晴らしい文化大国を自らの子孫が堕落させてる、幼稚な国民性は我らが日本とておんなじだから、それでもどっかの国の52番目の州になって、独自の文化さえ博物館に突っ込むか、上っ面だけのリバイバルで保存してる気になってるこの国よりは、まだ救いがあるよ。
私が子供だったら、絶対ヒゲ描いて、目をつけて、三角の積み木を置いちゃうでしょう。 ミャオ!
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