かくして
Vaglialle の
Tavolino 君は
この極東の地で再出発することになりました。
Mさん、大変お待たせしました。どうか末永く一緒にいてあげて下さい。そしてもしイタリアへご旅行の際にはアンギアリを訪れてみて下さいね。
仕上げは Gommalacca (シェラックニス)を2回、材のバサつきを抑える目的と、甘いあめ色を与える為に塗布しました。
そのあとさらに2かい、 Cera d'ape (蜜蝋)で磨きました。シェラックのいくぶん硬質な艶を、素朴で暖かみのある少しくぐもった艶にする為と、水にはめっぽう弱いシェラックの塗装面を保護するのがその目的です。
シェラック、蜜蝋、ともに樹脂系の塗膜は、虫を寄せ付けない効果もあります。ワックスがけは、数ヶ月に一度はやってあげることをお勧めします。蜜蝋の塗膜はシェラックのそれに比べて接着力が弱いので、特に天板などは頻繁にワックスを上がけしてあげた方がいいです。ちょっとお茶がこぼれちゃっても、シェラックの塗膜まで到達しなければシミになったりすることもないので。
うーん、それにしても、このひょろひょろとなびく脚…
この、危うい均衡が彼の持ち味です。
むしろ上に重いものが載っている方がいいかも知れません。しっかり接地していれば、4本の脚は見た目とは裏腹に強靭なので安定するでしょう。もちろん揺すれば多少は揺れます。その際負担がかかるのは脚の付け根、すなわちジョイント部です。そのジョイント部を含む枠は、強化されています。机を横に寝かせて脚をひっぱたくなどの強い衝撃を与えれば、引き出しのはまっている枠の細い部分を折ることもできますが、まさか、そんなことが起こるわけないと思うので、安心して使っていただいて結構です。
あんまり過保護にしてもつまらないので…。
錠前と鍵は、アンティークのリプロダクションです。当時と同じ素材と作り方で作られています。ただ、錆びた感じは“ヤラセ”です。でも、ピカピカの鉄じゃ、あんまりにもあんまりでしょ?
虫食い穴もワックスで埋めてあります。
Ciao, Tavolino..!
お別れだね!元気でやってくれい。君がこの先、どのくらい生きて、ぼそぼそと、でも力強く1800年代のイタリアと2000年代の日本を物語っていくのかは知りようもないけど、君の存在は政治家のクサいマニフェストなんかよりよっぽど真実で、私達にいろんなことを考える機会を与えてくれると思うな…。
君は、“物”だけど、歴史の中の人間の善い意志や精神、もしかしたらあまりいただけない人間の習性なんかが形作った一つの成果です。
人の手に成る“物”を保存しようとする理由はこれに尽きると思います。
その為の RESTAURO (レスタウロ)ー 修復です。
えへっ
HP・
La Bottega Artistica はこちらから。